九州電力とNTTアノードエナジー、三菱商事の3社は6月10日、太陽光発電の出力制御量を低減することを目的に、系統用蓄電池を活用した共同事業の検討を始めたと発表した。
系統用蓄電池とは、需要地ではなく、電力系統側につなぐ蓄電池のこと。出力が変動する再生可能エネルギー発電所や基幹系統に接続し、系統の安定化を図る効果が期待されている。
今回の3社の発表によると、系統用蓄電池が太陽光発電の余剰電力を充電することで出力制御量を減らすとともに、需給調整市場や容量市場などの電力市場を利用した取引を行う事業モデルの構築を目指すという。
(目指す事業のイメージ。出典:九州電力株式会社)
この共同事業の第一歩として、NTTアノードエナジーが4.2MWhのリチウムイオン蓄電池などを福岡県田川郡に設置することを計画している。資源エネルギー庁の令和3年度補正予算「再生可能エネルギー導入加速化に向けた系統用蓄電池等導入支援事業」補助事業を活用して行うとされた。設置時期は2023年2月を予定している。
系統用蓄電池に関しては、九州電力が2016年度、300MWhのNAS電池を利用した実証実験を行っている。NAS電池とは、ナトリウム(Na)と硫黄(S)による化学反応を用いた蓄電池で、充放電を繰り返しても容量の劣化が少ないという特徴をもつ。
このときの実証実験では、1日あたり最大300MWhに相当する最エネ出力制御量を回避するための運転を計画通り行うことに成功したという。
なお、今年5月には、大型の系統用蓄電池を発電事業と位置付ける電気事業法の改正案が成立し、2023年4月から施行される見通しとなっている。系統用蓄電池が発電事業として正式に位置付けられることで、大型の蓄電池を系統に接続する際には、原則として接続を可能とする環境整備が求められる。
出力制御は今年4月、これまでの九州エリアに加え、四国、東北、中国エリアでも新たに開始された。さらに、今年5月の大型連休最終日にあたる8日には、北海道エリアでも出力制御が始まった。
出力制御で抑制される発電量を少しでも減らし、再エネ発電を有効に活用するためにも、こうした系統用蓄電池の実用化が期待される。
九州電力株式会社:系統用蓄電池を活用した太陽光発電の出力制御量低減に向けた共同事業の検討開始について
文:山下幸恵(office SOTO)