電力需給の逼迫に伴う広範な節電要請が頻発する近年、電力の安定供給が危ぶまれる状況は日本経済にとって深刻な課題となっている。この解決策として、政府主体で供給力となる電源の増強を推し進めるが、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは電源としての安定性が低い。そこで電力の需給バランスを安定させる機能として、昨今「系統用蓄電池」活用への注目が急増中だ。今回の系統申し込みの集中はこうした背景が大きく影響しているとみられる。
北海道の系統用蓄電池の接続検討申込は、2022年7月末時点で、ファーム系統、ノンファーム系統の合計で61件(1.6GW)となっており、 北海道エリアの平均需要(約3.5GW)の5割近い量だ。
引用:北海道電力ネットワーク株式会社『系統用蓄電池の接続に係る課題と対策について』
今回、系統用蓄電池の接続・利用の在り方が検討された「第41回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会」にて資源エネルギー庁からは、蓄電池の接続に際して系統増強を行う結果、工事完了まで同じ系統に他の需要が接続できなくなる可能性が示唆され、順潮流側の系統混雑時の充電抑制を条件とすることで系統増強を回避する案や、系統の増強に関する規律、費用負担等の在り方について検討を進める方向性が示された。
また系統増強にあたり、工事の費用負担が発生することが予想され、蓄電池設置事業者に多額の費用負担が発生する可能性がある。
今回、特に系統用蓄電池の接続希望が殺到している北海道の一部系統においては、ほくでんネットワークが緊急的な対応として蓄電池の充電制約を条件に、早期に系統用蓄電池の接続を進める考えを示している。
分科会委員からは、系統潮流の緩和を行うには、北海道のような接続が混雑するエリアでは系統増強にコストがかかることを広く発信することはもちろん、同時に、系統に空きのあるエリア※で接続を進める方がインセンティブが大きくなるという仕組みを整備することが重要との意見が出た。現在、適地の公開状況は、東京電力パワーグリッドや関西電力送配電で「ウェルカムゾーンマップ」として、工場等への特別高圧供給等について比較的迅速かつ低コストで提供可能なエリアが公開されている。このように系統用蓄電池の導入促進に向けて、今後も事業者が蓄電池を接続しやすい場所を特定するのに役立つ情報を公開していく体制が求められる。
今年5月に電気事業法での位置づけにおいて10MW以上の蓄電池運用が「発電事業」として認可されるなど、蓄電池活用の需要増加や法整備が急がれるなか当分科会では引き続き議論が進められる。
※ 留意点として系統に空きのあるエリアにおいて必ずしも電力需給や、市場価格のバランスがとれるとは言えない
系統用蓄電池とは
電力系統に単独で送電線や配電所に直接接続する蓄電システム。時間帯に応じ系統向けに放電する(=逆潮)のみならず、系統から受電して(=順潮)充電も行う。このため、系統接続に際しては逆潮流側だけでなく、順潮流側の空き容量についても考慮する必要がある。
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非化石エネ使用割合の目標設定を義務化、大型蓄電池を発電事業へ位置づけ。 https://zerofit.jp/new/news/10296.html
[参考]
経済産業省 「第41回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/041.html
資源エネルギー庁 『系統用蓄電池の接続・利用の在り方について』https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/041_01_00.pdf
北海道電力ネットワーク株式会社 『系統用蓄電池の接続に係る課題と対策について』https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/041_02_00.pdf